極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 私はほっと息を吐きだしてから、気を取り直してお礼を言う。

「結貴、今日はありがとう。ひさしぶりに着飾って楽しかったしゆっくりできてリフレッシュできた。エステ代も、服や靴も、きっとすごく高価なものなんでしょ? どうやってお返しをすればいいか……」
「そんなの気にしなくていいよ。文香が満足してくれたんなら、それだけで俺はうれしいから」
「お店についたとたん全身エステがはじまったときは驚いたけど、すごく気持ちよかった。おかげ肌がもちもちだよ」
「へぇ。触ってもいい?」

 深く考えずうなずくと、結貴の長い指が私の首筋にふれた。
 コートからのぞく鎖骨をそっとなぞられ、体の中心がぞくりとうずく。

「ん……っ」と思わず唇から吐息が漏れた。
 私を見つめる結貴の視線が、熱を持っていく。

「まいったな。今、すごく文香にキスしたい」
 
 耳もとでささやかれ、心臓が大きく跳ねた。

「そ、そういうこと、言わないで」
 
 動揺を隠すためにうつむくと、「どうして?」と問われる。

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