極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 仕事中に陰口を言われ続けるのは精神的にかなり疲れる。
 でも、生活のために働かなきゃいけないし……。

 できれば週二日、土日が休める職場で働きたい。

 唯一の休みの日曜は買い物や自宅の家事、そして実家の掃除をするだけであっという間に時間が過ぎてしまう。
 今の生活じゃ、未来をお出かけに連れて行ってあげることもなかなかできないから。
 
 登録している派遣会社に相談しているけれど、シングルマザーで頼れる人もいない私には条件に合う仕事はなかった。
 
 食欲がなくて、バッグからステンレスのボトルだけを取り出した。
 中には家で淹れてきた、シナモンやクローブなどのスパイスが入った暖かい紅茶。

 ひと口飲んで、ほっと息をつく。
 胃の奥がぽっと温かくなるとともに、強張っていた肩から力が抜けた。

「よし、自分にできることを前向きにがんばろう」

 ひとりごとを言って自分をはげます。

 するとどこからか『葉山結貴さん』という名前が聞こえた。
 驚いて持っていたボトルを落としそうになる。
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