極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
「どういうリアクションをしていいのかわからなくて、困るから」
「じゃあ、心の中で思うだけにする」

 眉を八の字にした私に対し、結貴はご機嫌な様子だった。

 結貴は甘い空気を切り替えるように「部屋で未来ちゃんが待っているから行こうか」と階段の上を見上げる。

「未来はお留守番中いい子にしてた?」
「すごくおりこうだったよ」

 話しながら、私をエスコートするように手を取り階段をあがる。


 玄関の扉が開くと同時に、「おたんじょうびおめでとう!」という未来の声が聞こえた。

 目の前に色とりどりの紙吹雪が舞う。
 玄関で待ち構えていた未来が、両手に持った細かく切った色紙を天井めがけて放り投げたらしい。

「え? 誕生日?」

 状況が理解できず目をまたたかせる私に、未来と結貴が顔を見合わせ笑い合う。

「文香、自分の誕生日を忘れてた?」

 そうか、今日は私の誕生日だ。

「ゆうきさん、サプライズだいせいこうだね!」
「やったね」

 未来と結貴がパチンと音をたてて手を合わせる。

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