極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 まっすぐな未来の愛情を全身で受け止め、涙がこみあげそうになる。
 涙をこらえながら、隣に立つ結貴を見上げた。

「結貴も、本当にありがとう。こんなうれしい誕生日、はじめて」
「よろこんでもらえてよかった」

 結貴の視線が優しくて、私はさらに泣きそうになってしまった。

「そうだ。せっかく部屋をかざりつけしたし、文香も綺麗だし、写真を撮ろうか」
「写真?」
「未来ちゃんひとりの写真が多くて、なかなかふたりで撮る機会がないだろ。俺がふたりを撮るよ」

 結貴は棚の上に飾ってある未来の写真を見たんだろう。
 母子家庭だからほかに撮ってくれる人がいなくて、我が家のアルバムは未来ひとりの写真が多い。

「写真を撮るなら、ゆうきさんもいっしょがいい!」

 未来の言葉に、結貴は柔らかく笑う。

「うれしいけど、せっかくだから家族水入らずで……」
「私も、結貴と一緒に撮りたい」

 気付けば、遠慮しようとする結貴の言葉をさえぎってそう言っていた。
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