極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 しばらくすると瞳がとろんとしてきて、服を掴む手から力が抜ける。
 
 未来がすっかり寝入ったのを確認して、私は和室に布団の用意をする。
 リビングに戻ると未来を抱っこしたまま結貴が立ち上がった。

「じゃあ、寝かせてくるね」

 和室に入る結貴を、私は複雑な気持ちで眺めていた。

 あんなふうに感情を爆発させて泣く未来をはじめて見た。

 結貴と過ごす時間が増えてから、未来は少しずつ変わってきた。

 スーパーでの抱っこやお膝のイスのおねだり。
 そして、今日のわがまま。
 未来が父親の存在を求めているのは確かだ。
 
 私の前では隠していたけれど、未来はずっと母子家庭の我が家をさみしく感じていたのかな。
 
 わが子にこんな我慢をさせていたなんて、母親失格だ。
 
 自分がふがいなくて、涙がこみあげてくる。
 
 リビングでひとり膝をかかえていると、和室を区切る襖が開き結貴が戻ってきた。

「未来ちゃんは寝たよ」

 私は慌てて目元をぬぐい、顔を上げる。

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