極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
「ありがとう。ごめんね、未来がわがままを言って困らせて」
「いいよ、小さな子供のわがままなんてかわいいもんだから」

 そう言うと結貴は私の隣に腰を下ろした。

「それよりも、少し文香を甘やかしてもいい?」

 どういう意味だろうと首をかしげると、私の返事を待たず長い腕がのびてきた。
 背中に回った大きな手が、私を引き寄せる。

「ゆ、結貴……?」

 驚いて結貴の胸を押し返そうとすると、閉じ込めるように腕に力を込められた。
 ぎゅっときつく抱きしめられて、心臓が飛び跳ねる。

「文香。毎日料理を作って仕事をして子育てをして、本当にお疲れ様」

 結貴は私を抱きしめながら、優しい声でそう言った。
 その言葉の温かさをうれしいと感じるのと同時に自己嫌悪が湧き上がってくる。

「そんなふうに優しくほめてもらう資格なんてない。私は、母親失格だよ」
「どうして?」
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