極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています

結貴side


結貴side

                    
            


          

 執務室でアランと打ち合わせをしているとドアがノックされた。

「はい」
 
 アランがドアを開ける。
 そこにいたのは意外な人物。
 葉山製薬の社長、俺の父だ。

「少しいいか」という問いかけになずいた俺を見て、父は応接セットに腰を下ろす。

「今、お飲み物をお持ちします」
 
 アランがそう言うと、父は「必要ない」と首を振った。
 
 上品な笑みを浮かべて会釈したアランが部屋を出て、父とふたりきりになる。
 
 昔から父は無口で不愛想だ。
 物心がついたころから両親は別居していたから、プライベートな会話をした記憶はほとんどない。
 
 なんの用だろうと思いながら父の向かいに腰を下ろす。

「ADCの臨床試験はどうだ」

 前置きもなく切り出されたのは仕事の話だ。
 イギリスのメガファーマと提携して開発した新しい抗がん剤の名前を出され、俺はうなずいて口を開く。

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