極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 あの頃も十分かっこよかったけれど、二十八歳になった彼は大人の色気と落ち着きが増しさらに魅力的になっていた。

 充実した生活を送っているのが映像からも伝わってくる。

 仕事が忙しい彼を支えてくれるような、素敵な恋人がいるのかもしれない。
 結貴の年齢なら、結婚していてもおかしくない。
 
 そんな想像に、胸の奥に秘めてきた恋心がよみがえり、じりじりと身を焦がした。
 
 五年前のこととはいえ、私と彼が付き合っていたのが信じられない。
 
 彼はテレビで取り上げられるような大企業の副社長で、私はファミレスのウエイトレスだ。
 住む世界が違いすぎる。
 
 涙がこみ上げてきそうになり唇をかんでこらえていると、休憩室のドアが開いた。
 入ってきたのは三嶋店長だった。
 
 慌てて目元をぬぐった私に気付き、店長は眉をひそめる。

「白石さん。さっきフロアの子たちに悪口言われていたみたいだけど、大丈夫?」

 どうやら私を心配してわざわざ様子を見に来てくれたらしい。

「大丈夫ですよ」
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