極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
「そういうことか。だから五年前、文香は好きな男ができたと嘘をついて俺から離れたのか」

 お母様がはっとしたように口をつぐんだけれど、結貴は確信に満ちた表情でこちらを見る。

「母から言われて、俺と別れたんだな?」
「ごめんなさい。私が結貴の恋人として将来の妻として、ふさわしくなかったから……」
「どうしてそんな大切なことを、親に決められなきゃいけないんだ。かあさんだって親父と結婚して身分さを責められて苦労してきたんだろ? なのに、なんで」

 結貴に問い詰められたお母様は苦しそうにうつむいた。

「身分や育ちの違いなんて、嘘よ。私が結婚を反対した理由は、もっとちがうこと……。五年前、文香さんに病院を紹介したでしょう? その先生から聞いたのよ。文香さんが妊娠しづらい体質だって」

 お母様も、知っていたんだ……。
 青ざめる私の横で、結貴は「そんなことで」と眉を寄せる。

「女性にとっては、そんなことじゃないのよ」

 結貴の言葉をさえぎって、お母様は声を荒げた。

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