極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 お母様は顔を覆う。

 私も子を持つ母親だから、自分の子供に幸せになってほしいと願う気持ちは痛いほどわかる。
 彼女はそのために私にあんなことを言ったんだ。

 思わず涙ぐんだ私の横で、結貴はまっすぐにお母様を見つめ口を開いた。

「もし結婚して文香が不妊で苦しんだとしても、俺は全力で彼女を守るよ」

 言いながら、私の手をぎゅっと握った。
 その頼もしさに、胸が震えた。

「本質を見失わなければ、乗り越えられる問題だよ。葉山製薬の跡取りは血にこだわる必要はない。会社の存在意義はひとりでも多くの患者さんを救うことで、葉山家が私腹を肥やすためにあるんじゃないんだから。周りからどんなことを言われても、俺が文香を愛し続ければ守っていける」
「でも私と夫は……」
「それは、かあさんが必死になりすぎて視野が狭くなっていたんじゃないか?」

 結貴がそう言ったとき、「そうだな」と低い声が聞こえてきた。
 渋みのある、落ち着いた声。

< 178 / 197 >

この作品をシェア

pagetop