極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 仕事を早めに上がらせてもらい、祖父の入院している総合病院へと向かう。
 病室に入り、ベッドで本を読んでいた祖父に「おじいちゃん」と声をかけた。

「おお、文香。お疲れ様」

 私の声を聞いて笑顔を浮かべる祖父の前に、持ってきた荷物を出す。

「タオルと着替えと、それから本も持ってきたよ」
「悪いね。いつも迷惑ばかりかけて」
「なに言ってるの、迷惑なわけないでしょ。未来もおじいちゃんに会いたがってるよ。次の日曜は一緒にお見舞いに来るから」
「そうか。うれしいねぇ」
 
 しわだらけの柔和な表情に、ほっこりとした気分になった。
 少しだけ弱気を吐きたくなる。
 
 私はベッド脇の椅子に腰かけ、祖父の手にそっと触れた。
 血管や筋が浮く、やせて乾いた手。

「おじいちゃん、早く元気になってね」
「うーん。そうは言われても、いつお迎えが来てもおかしくない年だからねぇ」

 苦笑まじりに言われ、私は顔をしかめる。

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