極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
「今更謝罪なんてしないで。子供も産めない私に愛想をつかしたから、家に寄り付かなくなったんでしょう?」
「違う。結婚に反対する周囲の声を黙らせるために、必死になって結果を出そうとしていた。そうすれば、子供ができなかったとしても親族たちがおとなしくなるだろうと思って、裕子のフォローよりも仕事を優先してしまった」
「あなたがそんなことを考えているなんて知らなかったわ……」
「私も、裕子がそんなにつらい想いをしていたなんて気付けなかった。家に帰るといつもお前は暗い顔をしていて、私と結婚したことを後悔しているんだろうなと思っていた。離婚してお前を自由にしたほうが幸せになれるんじゃないかとに思ったんだが、愛していたから憎まれようとも手放したくなかった」
「私も、あなたを愛していたから、いつ離婚したいって言われるかとずっとおびえていて……」

 不器用なふたりは言葉を交わすのを恐れているうちに、どんどんすれ違ってしまったんだろう。

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