極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 心からそう言うと、アランはにやりと口端を上げる。

「でも、感謝してる。ありがとう」
「どういたしまして。今度こそ、手放すなよ」

 こつんと胸をたたかれ、俺は力強くうなずいた。
           
                

 病院を出た俺たちは食事をしてから文香の自宅へ帰る。
 外はすっかり日が暮れていた。

「がんばって作ったのに、ぎょうざ、食べられなかったね」

 座卓の上に並んだ作りかけの餃子を見て、未来ちゃんは残念そうにつぶやく。
 半日以上室温においてあった餃子は、もったいないけれど廃棄するしかないだろう。

「仕方ないよ。また作ろう」
「これからは、ずっと一緒にいられるから」
「ほんとう?」

 俺の言葉に、大きな目が輝いた。

 素直で純粋な彼女を、ずっとかわいいと思ってきた。
 自分の娘だと知った今は、愛情がさらに増す。

「本当。これからは家族になって、三人で一緒にくらそう」
「やったぁ! ゆうきさんといっしょ!」

< 187 / 197 >

この作品をシェア

pagetop