極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 白い建物の扉が開かれると、そこには白い十字架があった。
 円を描く高い天井に、ガラス張りの壁。
 美しい海が見えるチャペルだ。
 
 十字架の下には、未来や義両親、アランさんの姿もある。
 
 これって、もしかして……。

 込み上げてくる涙を必死にこらえながら祖父を見ると、いたずらっぽくウインクをされた。

「かわいい孫の結婚式を見たいという私のわがままを、葉山さんが叶えてくれたんだ」
「おじいちゃん……」
「文香、幸せになるんだよ」

 その優しい表情に、のどがぐっと詰まって言葉が出なくなる。
 私が何度も首を縦に振ると、背中をぽんと叩かれた。

「これからは結貴さんと歩いて行きなさい」

 そう言われ振り返ると、愛する夫が私を見つめていた。
 そして光があふれるチャペルに、大好きな人たちが待っている。

「文香、行こうか」

 こらえきれなくて、涙をにじませながらうなずいた。

 十字架の下で愛を誓い、指輪の交換をする。

 五年前は彼からの指輪を受け取ることができなかった。
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