極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 恐る恐る目を開けると、長い腕が私の腰に回り体を支えてくれていた。
 落ちそうになった私を、誰かが助けてくれたらしい。

「大丈夫ですか?」
「あ、ありがとうございます……」

 低い声に問われ、震える声でお礼を言いながら振り返る。
 そして、そこに立っていた人物に目を見張った。

 上品なスーツに、艶のある黒髪。
 意志の強そうな切れ長の瞳とすっと通った鼻筋が綺麗な、端整な顔の男の人。

「文香?」

 私の名前を呼ぶ柔らかくて甘い声。
 五年前、この声に名前を呼ばれるのがなによりも好きだった。

「結貴……?」

 信じられなくて声がかすれた。
 まさか、こんなところで再会するなんて。

「すごい偶然だな」
「ど、どうしてここに?」
「俺は仕事で。副社長に就任したからあちこちの病院に挨拶して回ってて」

 言いながら、結貴は私を支えていた腕をほどく。

 そういえば、お昼のニュースで半年前に帰国した彼は副社長に就任したと報じていたっけ。

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