極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 完全に面白がる口調に思わず顔をしかめた。

 彼、黒川アランは俺と同い年の二十八歳。
 イギリスと日本のハーフで、上品な身のこなしと整った顔つきが目を引く美形だ。
 
 俺がイギリスで働いているときからサポートしてくれていた。
 俺の帰国にあわせ秘書として一緒に日本にやってきたのだ。

「あれ。忘れ物のボトルを返しに行ったんじゃ?」

 俺の手の中にあるボトルを見て、アランは首をかしげる。

「日曜に彼女がお見舞いに来るそうだから、そのとき直接渡すことにした」
「そんなまどろっこしいことしないで、連絡先を聞き出してさっさと会いに行けばいいのに。五年も想い続けて運命的な再会をしたのに、さらに三日も待つなんて、結貴は本当に気が長いな」

 あきれ顔のアランに、肩をすくめるだけでなにも答えず歩き出す。


 五年もずっと想い続けてまた出会えた。
 だから今度こそ絶対に彼女を離したくない。そう思った。


  


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