極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 自然に人の心を気遣える彼の優しさに、胸がぐっとつまった。

『俺はいつかガンの新薬の開発に携わって、たくさんの患者さんを救う手助けをしたい思っているんだ』

 結貴はさらりと言ったけれど、その言葉には強い決意が込められているのを感じた。

『素敵な夢ですね。葉山さんなら、きっと実現できると思います』
『俺のことを知ってるの?』
『知ってますよ。このあたりの学校に通ってて、葉山さんを知らない人なんていないと思いますよ』

 私がくすくすと笑うと、結貴も目元を緩めて微笑んだ。

『じゃあ、俺の名前だけ知られているのは不公平だから、君の名前も教えてくれる?』

 そう言われ、『白石文香です』と自己紹介する。

『文香?』

 甘くて柔らかい声に名前を呼ばれ、心がふわっと浮き立った。

『いい名前だね』

 そ微笑まれた瞬間、私は恋に落ちたんだと思う――。




「わすれものをして出会うなんて、シンデレラみたい!」

 私の話を聞いていた未来は、きらきらと目を輝かせる。

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