極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
「おじいちゃん。おりがみ持ってきたよ」

 未来は背負っていたリュックを下ろし、中から折り紙を取り出す。
 
 お見舞いの定番といえば鶴だけど、四歳の未来には難しすぎるから、リュックから次々に出てくるのは色とりどりのチューリップだ。
 
 あっという間にベッドがお花畑になってしまう。

「ありがとう、未来。こんなにたくさん」
「きれいでしょ? おじいちゃんうれしい?」

 目をキラキラさせる未来に、祖父は目じりを下げた。

「あぁ。とてもうれしいよ」

 祖父に頭をなでられ、未来はくすぐったそうに首をすくめる。
 ふたつに結んだ栗色の髪が小さな肩の上でさらりと流れた。
 
 そのかわいらしさに目を細めていると、祖父がベッドサイドに置いてある時計をちらりと見た。
 
  入院中の祖父が時間を気にするなんてめずらしい。

「もしかしてこれから誰かがお見舞いに来たりする?」

 用事があるなら長居しない方がいいかな、とたずねる。

「いや、ゆっくりしていきなさい」
 
< 36 / 197 >

この作品をシェア

pagetop