極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています

         


              
     




          




 目を覚ますと、頬が涙で濡れていた。
 私は静かに瞬きをして天井を見上げる。
 
 ゆっくりと息を吐き、また吸い込む。
 それを繰り返していくうちに、あの日に引き戻されていた気持ちが現実に帰ってくる。
 
 結貴と別れてから、四つの季節が五度巡った。
 それなのに、いまだに彼の夢を見る未練がましい自分にあきれて小さく笑う。
 
 気持ちを切り替えるように息を吐きだし、布団から体を起こす。
 隣にはすやすやと眠る愛おしいわが子がいた。
 ひとり娘の未来だ。
 
 ぷくぷくのほっぺに長いまつげ。
 うっすらと開いたピンクの唇の間から、規則的な寝息が漏れている。
 幸せそうな寝顔に頬がゆるむ。
 
 体をかがめ小さな額にキスを落としてから、そっと寝室を抜け出した。

 私が住んでいるのは古い木造の1DKのアパート。
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