極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています


              
         


     


 翌週の日曜日。
 今日も未来と一緒に祖父のお見舞いに向かう。

 病院へ行く途中、手を繋いだ未来に「きょうは、ゆうきさんくる?」とたずねられた。

「今日は来ないよ。この前は忘れ物を届けてくれただけだから」

 私の言葉に、小さな肩がしょんぼりと落ちた。
 
 一度しか会ったことがない結貴にこんなに懐くなんて。
 もしかしたら母子家庭が寂しくて、結貴に父親像を重ね合わせているんだろうか。
 
 未来には、金銭的にも時間的にも我慢させてばかりだ。
 普通の家庭で育ったら、家族で旅行にいったり、好きなおもちゃを買ってもらったり、楽しいことがたくさんあるのに。
 
 母子家庭の我が家では、当たり前の幸せをあたえてあげるのはとても難しい。
 
 きっと未来が成長すればするほど周りの家庭との差は大きくなり、彼女にさらにたくさんの我慢をさせることになるだろう。
 
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