極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 もしかしたら、家業を継ぐのをやめると言い出すかもしれない。

 そうなったら、家族も会社も新薬でたくさんの患者さんを救いたいという夢すら捨てさせることになる。


 私には、そこまでして選んでもらう価値はない。
 
 五年前の私は必死に涙をこらえ、結貴に別れを告げることしかできなかった。




「はわぁぁ……っ!」

 眼下に広がる東京のビル群に、未来が感激の声を上げた。
 両手をぴんと伸ばし、直立不動のまま窓の前で固まっている。

「未来ちゃん、気に入った?」

 結貴に声をかけられた未来は、「うん!」と思いきり首を縦に振った。

「すごいけしき! お空の上にいるみたい!」
 
 祖父の病院を出た後に結貴に連絡をしてみると『今から病院に迎えに行く』と言われ、少し遅めのランチをすることになった。
 
 到着したのは高級ホテル。
 
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