極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 普段着の私たち母娘がこんなホテルに足を踏み入れるなんて不相応すぎる!と戸惑っていると、結貴は周りの客に気兼ねしないですむように上層階に部屋を用意してくれていた。
 
 まだ小さな未来がはしゃいで声を上げても大丈夫なように配慮してくれたらしい。

 こんな高級ホテルのよいお部屋を食事のために利用するなんて、いったいいくらするんだろう。

 内心焦りまくる私をよそに、未来は好奇心に満ちた表情で部屋の中を見回す。

「あっちのドアはなぁに?」
「見てみる?」

 未来がうなずくと結貴は柔らかい笑みを浮かべ小さな手を取る。
 そして部屋の探索のお供をする。
 
 ひとつめのドアを開けばライティングデスクのある書斎が。
 その先には、大理石が美しいゆったりとした洗面台。
 そして、大きな窓から東京の景色を一望できる広いバスルーム。
 最後のドアを開くと、キングサイズのベッドが置かれたベッドルームがあった。
 

 こんなにたくさん部屋があるなんて、ここはスイートルームというやつなのでは……。
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