極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
「ママのお手伝いをするなんて、いい子だね」

 大きな手に頭をなでられ、未来はうれしそうに無邪気な笑みをこぼした。

 微笑ましいやりとりを、私は少し離れた場所から見ていた。
 
 ふたりは実の親子だと知らないはずなのに、その姿は仲のいい親子にしか見えなかった。
 
 隠し事をし嘘をついている罪悪感が胸に突き刺さり苦しくなる。

「文香」

 名前を呼ばれはっとする。
 結貴がこちらに心配そうな視線を向けていた。

「どうした? ホテルでの食事はいやだった?」
「ええと、いやだったわけじゃなくて……」

 気付けば暗い顔をしていた。私は慌ててとりつくろう

「祖父のお見舞いのお礼なのに、こんな高級ホテルでの食事代を私に払えるかなって心配になって」
「お礼って? 文香に食事代を出させるわけがないだろ」
「でも、祖父から結貴がわざわざお見舞いに来てくれたから、私に代わりにそのお礼をしてくれって頼まれてたけど……」
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