極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 私にとって四歳の未来を抱っこするのはひと仕事なのに、結貴は軽々と持ち上げた。
 その頼もしさに鼓動が速くなる。

 奥のベッドルームまで運び、未来を寝かせる。
 結貴はベッドに腰かけて、無邪気な寝顔を愛おしそうに見下ろした。
 
 私はその様子を、ベッドルームの入り口に立ってながめていた。

「かわいいな」

 ぽつりとつぶやかれ、胸が苦しくなった。

 もし、未来はあなたの子供だと告げたら、結貴は喜んでくれるんだろうか。
 そんなことを考えて、ありえない想像だと首を横に振る。

「未来ちゃんの父親は、こんなにかわいい娘の姿を見られないまま亡くなったんだな。きっと、すごく無念だっただろうな」

 結貴はくぅくぅと寝息をたてる未来の柔らかい頬を指でそっとなでながらつぶやいた。
 その表情は愛情と嫉妬が混ざっているように見えた。

 私は胸のあたりに手を当てる。
 罪悪感で、胸がずきずきと痛んでいた。
 
 黙り込んでいると、結貴は視線をこちらに向けた。

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