極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 居間と寝室を区切る襖を開けて声をかけると、「んー」とぐずるような声とともに布団のふくらみがもぞもぞと動く。

「早く起きないと、未来のブロッコリー食べちゃうよ」
「だめぇ」

 お野菜が大好きな未来は、ようやく布団から出てきてくれた。
 まだ眠いんだろう。
 寝ぼけた様子で目をこすっている。

「ごはんできてるから、顔を洗っておいで」

 私の言葉にこくんとうなずいて、ぺたぺたと洗面所へ歩いて行く。
 
 ちょっと前まで蛇口をひねることもできなかったのに、今では踏み台の上で背伸びをしながら洗顔も歯磨きもひとりでするようになった。
 
 成長がうれしい反面、少しさみしく感じてしまうのは、親のわがままなんだろうな。
 
 座卓の前にふたりで並び、「いただきます」と手を合わせる。
 未来専用のちょっと厚みのあるの座布団の上にちょこんと正座する姿がかわいい。
 私は目を細めながら朝ごはんを食べる未来を眺めた。
 
 明るいサラサラの髪とくりくりの目元は私譲り。
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