極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 生前の写真を飾ってあってもおかしくないのに。
 そう思い眉をよせていると、文香に「紅茶でいい?」と声をかけられた。

「あぁ、ありがとう」
「ごめんね。こんな狭い部屋にあがってもらって。今お湯を沸かすから」

 文香はそう言いながら、座布団をすすめてくれる。
 うなずいて座ると、未来ちゃんが本棚をあさっているのに気づいた。
 
 自分の背中に本棚から取り出したなにかを隠し、もじもじした様子でこちらを見る。

「未来ちゃん、なにを持ってるの?」
「ゆうきさん。みらいの絵、見る?」
「ぜひ見たいな」
  
 そう微笑みかけると、白い頬がピンク色になった。
 背中に隠していたスケッチブックを小さな両手で差し出す。
 
 俺はスケッチブックを受け取り、「一緒に見よう」と誘う。   
 未来ちゃんは俺のとなりにちょこんと正座した。

「これはみらいでね、これはママで、これはおじいちゃん」

 ひとつひとつ指さしながら説明してくれる。
 カラフルで子供らしいのびのびとした絵だった。
 
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