極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
「葉山さんとおしゃべりするのが楽しくて、暇ならぜひまた顔を見せにきてくれませんかとお願いしただけだよ」

 何度か会話を交わしただけで、祖父はすっかり結貴を気に入ったようだった。
 
 祖父は私と結貴が恋人になればいいと思っているのが、なんとなく伝わってくる。
 
 やっぱり、未来の父親が結貴だってことに勘づいているんじゃ……。
 
 疑いながら祖父の顔色を窺っても、私の三倍近く生きている祖父の腹を探れるわけがない。

「人の顔をじっと見て、どうかしたかい?」
 
 穏やかに微笑まれ、諦めて「なんでもない」と首を横に振った。

「私はそろそろ昼食が運ばれてくる時間だから、未来たちもお昼を食べに行きなさい」

 祖父は私たちを病室から追い出す。

 やっぱり自分のお見舞いよりも私たちの親交が深まるように仕組んでいる気がする。
 病室を出るときに祖父をちらりとにらむと、温かな微笑みを返された。

 私の考えていることは全てお見通しで、その上でお節介をやいているような、優しい表情だった。

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