極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 私は慌てて未来の話を遮る。
 
 未来に聞かせたその思い出は結貴とのものだ。
 未来の父親は自分なんだとバレてしまったらどうしよう。
 
 けれど焦る私に気付かない未来は、頬を紅潮させながらしゃべり続けた。

「おふとんに入って寝るまえにね、いつもパパのおはなしをしてもらうの。ママはとってもパパのことを好きだったとか、パパはほんとうにすてきな人だったとか」

 無邪気にそんな話をされ、恥ずかしさと動揺で火がでそうなほど頬が熱くなる。
 
 嬉しそうに話し続ける未来の顔をのぞきこみ「未来、ごはんが冷めちゃう前に手を洗ってこようか」と声をかけた。
 
 未来は「はぁい」と素直にうなずいて、手を洗うために踏み台が置いてある洗面所へ向う。

 その後ろ姿を見てほっと胸をなでおろした。
 
 まだ熱を持つ頬を手で覆いため息をつく。
 そして顔を上げると、まっすぐにこちらを見つめる結貴と目が合った。

「あ、ごめんね。未来が変な話をして……」

 父親だということがばれていませんように。
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