極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 そう願いながら謝った私を、結貴は綺麗な眉をわずかにひそめて見下ろしていた。

「文香は、未来の父親にも俺にしてくれたように弁当を作ったんだ?」
「ええと……」

 否定も肯定もできずに顔をそらすと、彼が一歩近づき私の肩に額を置いた。
 頬に艶やかな黒髪が触れ心臓が飛び跳ねる。

「友人でいいからそばにいたいって言ったのは俺だし、文香が今でもそいつのことを愛してるってわかってるのに……」

 結貴は私の肩に頭を預けたまま低い声でつぶやく。

「結貴……?」

 戸惑いながら名前を呼ぶと、結貴が視線を上げてこちらを見た。

「俺がどうやってもその男には勝てないのかと思うと、気が狂いそうなくらい嫉妬してる」
 
 熱を帯びた瞳に見据えられ、心臓が飛び跳ねる。

「亡くなった今でも文香に愛され続ける彼が、うらやましくて仕方ない」

 胸が痛いくらい締め付けられた。
 
 私が愛しているのはあなただと伝えられないのが、切なくて苦しくて、瞳がうるんでいく。
 
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