極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 基本、九時から十八時までの勤務で、用事があるときは多少時間の融通をきかせてもらっていた。
 
「今日はお仕事のあとにおじいちゃんのお見舞いに行くから、お迎えは七時ぎりぎりになっちゃうと思う」
「みらいもおじいちゃんに会いたい!」
「じゃあ、次の日曜日に一緒に行こうか」
「うん。やくそくだよ!」

 私がたてた小指に、未来は嬉しそうに指をからめた。


 私たちのアパートの近くにある実家でひとり暮らしをしていた祖父が入院したのは半年前。

 母子家庭で育ち、高校のときに母をガンで亡くした私にとって、祖父は唯一の肉親だ。
 
 
 父親の名前も明かせないまま妊娠したと報告したときも、つわりで苦しんだときも、初めての育児に必死になっていたときも、側で支えてくれたのは祖父だった。
 
 出産したあとしばらくは実家で一緒に暮らしていたけれど、未来が三歳になったころ『そろそろ母子ふたりで暮らしなさい』と出ていくように促された。
 
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