極秘出産のはずが、過保護な御曹司に愛育されています
 ぎゅーっと力をこめると、未来ちゃんは「くるいしーい!」と楽しそうに声を上げて笑った。

 許されるならこれからもずっと、このふたりのそばにいたい。
 文香が、俺とは違う男を愛しているとしても、その想いごと大切によりそって守ってあげたい。
 
 そんな思いが込み上げてきた。
 
 しばらくして腕を緩めると、解放された文香が照れくさそうに微笑んだ。
 その表情がかわいらしくて、顎をすくいあげキスをしたい衝動にかられる。
 
 未来ちゃんがいる手前、そんなことはできないけれど。

「この絵、ゆうきさんにあげるね」

 未来ちゃんはスケッチブックから絵を破り取ろうとする。
 無造作に紙をつかみ、力を籠める。
 
 俺はそれを見て、その小さな手を慌てて止めた。

「待って。破れたら大変だからもっと慎重に取ろうか」
「やぶれても、セロテープでとめたらだいじょうぶだよ」
「でも、こんなに素敵な絵が少しでも破れたら悲しいから」
「かなしいの?」

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