ふわふわパウダー
「大丈夫だよ。泣くことないって」
秋の体育祭でのことだった。
うちのクラスは、あと少しで学年優勝できるところに来ていた。
その大一番は、午前中最後の競技の女子の学年リレー

うちのクラスはトップ

あたしはアンカーだった。

けど

スタート直後に盛大に転んで、あっという間に抜かされてしまった。

そして逆転。

足を引きずってゴールしたあたしに、駆け寄ってくる人はまばらで、誰もが白い目で見ていた。

外の救護所にいたくなくて

無理に歩いて

無人の保健室で泣いた。
ケガの痛みより

逆転された悔しさより

皆にあんな目で見られたことが辛かった。

今までの楽しかった思い出まで、全て嫌なものに変わっていく……

その時だった。

ガララ……

保健室のドアを開ける音がして、あたしは慌てて涙を拭いた。
「東ぁ、大丈夫か?」
入ってきたのは、クラスの有名人・日下遼太だった。
「日下くん!」
あたしは、びっくりして言った。
「足痛い?なかなか戻らないから心配したよ」
日下くんは、あたしの向かいの先生用の椅子に腰を下ろした。
「弁当食った?」
あたしは首をふる。
「そ。俺もなんだ。2人分あるから一緒に食おうぜ」
日下くんはそう言うと、あたしの膝にお弁当の容器を置いた。
「今年のメニューは何かな。コロッケが良いな。俺さ~、コロッケ大好きでさ。食堂まで頼みに行ったんだよね~」
日下くんは軽快に笑って、蓋を開けた。
「お、やっりぃ!コロッケ入ってた。」
< 5 / 8 >

この作品をシェア

pagetop