ふわふわパウダー
「泣くなって」
小さい子をあやすみたいに、日下くんがあたしの頭を撫でた。
その温もりが優しくて、更に泣いてしまった。
「お前、頑張ってたじゃん。あんな点差くらい、すぐにひっくり返してやるよ」
日下くんは、あたしを慰めようとしてアレコレ励ましてくれた。
泣いて泣いて、何も言えなかったけど
それだけで、心から救われた。

ガララッ
また扉の音がした。
「志保~?」
瞳だった。
「あっ、日下!何泣かしてんのよ」
あたしと日下くんの様子を見て、瞳は眉を吊り上げて近付いてきた。
「ちげーよ!」
「瞳、日下くんは慰めてくれただけだよ」
あたしがフォローして、やっと瞳は日下くんを睨むのを止めた。
「俺、グラウンド戻るわ」
日下くんは、ため息をついて立ち上がった。
「あ、日下くん」
涙声のままで、あたしは慌てて声をかける。
「ありがとう」
日下くんは振り返って、お日様みたいに笑ってみせた。

そしてその後、日下くんの大活躍によって本当にうちのクラスは優勝した。
体育祭が終わる頃には、あたしもクラスの輪の中に入って興奮していた。
日下くんのおかげで、あたしを悪く言う人はいなくなった。

気にならない訳がない

そう、これがあたしのプロローグ

あれから2年。
あたしは変わらず、日下くんに恋してる。
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