隣のキミをもっと溺愛、したい。

近くないですか?

佐助山の中腹にある花籠神社。

歩道から神社へと続く古い石段を
不安な思いで見上げる。

石段のうえでは、
ぼんやりと灯る灯篭が
あたりを柔らかく照らしている。

昔のことがあって、
心の奥底に根付いてしまった恐怖感から
目をそらしつつ

灯籠の灯りを寄る辺に
ゆっくりと、足をすすめる。
 

隣を歩く一ノ瀬くんに
そっと視線を動かし
呼吸をととのえる。


一ノ瀬くんが
一緒に来てくれて、良かった。


一ノ瀬くんの存在に
不安や恐怖が少しずつ消えていく。


ふわりと流れてきた金木犀の香りを
胸いっぱいに吸い込んで、

気持ちを落ち着かせた。

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