隣のキミをもっと溺愛、したい。
【羽衣side】

石段ををのぼり終えると、
灯籠にライトアップされた椿が
色鮮やかに浮かび上がる。

花籠神社には
さまざまな植物や花々が植えられていて、

ライトアップされた
花々を鑑賞するために 

夕闇が降りはじめたこの時間にも、
たくさんの人が神社を訪れている。

けれど、今はそれどころではなくて!

一ノ瀬くんと、手が、つながってるっ!

どうしてこんなことに?


「こんな時間までやってるんだな」


隣では一ノ瀬くんが、
穏やかな笑顔を浮かべている。


「花を鑑賞しにくる人も多いから、
結構遅くまで開いてるみたい」

って、私もどうして
普通に会話してるんだろう?

この手はいったい⁈

事故っていうか、事件っていうか!


階段を登り終えてホッとして
手を放そうとしたものの、

一ノ瀬くんの大きな手が、
さらにぎゅっと強く私の手を包む。


な、なにが起こってるんだろう?


この神社って、

『手をつないで石段をおのぼりください』

って、どこかに書いてあった?

それとも、
一ノ瀬家には手をつないで
神社にお参りするっていう習慣があるとか?


一ノ瀬くんを見上げれば、
パッとそっぽを向いてしまって、
理由を聞くことができない。

もしかすると、なにかの罰ゲーム?

よくわからないけど

こんなの、全然平気じゃないっ!

私の心臓なんて簡単に破裂しちゃうよっ!

もうさっきから、
心臓がバクバクしすぎて、
息もまともにできない。

一ノ瀬くんは
自分のカッコよさがわかってなさすぎる!

それなのに
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