隣のキミをもっと溺愛、したい。
お守りをかばんにしまうときに、
一ノ瀬くんと手がはなれて、

ちょっとだけホッとする。


緊張しすぎて、
なんだか腕とか肩が
カチカチになってしまった。


ふうっ。

ホッとして一息つくと、
すぐに一ノ瀬くんの大きな手に包まれた。


むむっ。


さすがに、このままでは、
私のちっぽけな心臓がもたない。


この手の意味! 
ちゃんと確認しておかないと!


つないでいる手をじっと見つめて、
一ノ瀬くんを見上げた。


「あ、あのね、一ノ瀬くん!」


「ん」


柔らかく微笑む一ノ瀬くん。

なんて甘い笑顔なんだろう。


思わずぽーっとして、
慌てて頭を横にふる。


いやいやっ!


「い、一ノ瀬くんっ。

こ、この手は、あの、なにが起こって、
こうなってるんでしょうか?

どうしたらいいんだろう?」


つないでいる手を高く上げて、
じっと一ノ瀬くんを見つめて確認すると。


「は?」


視線を尖らせた一ノ瀬くん、
……めちゃ怖いです。


とりあえず、
一ノ瀬くんの殺気を感じて
手をつないだまま黙って歩く。


灯篭の柔らかな灯りに照らされて、
天空では星が瞬いていて、

なんて、綺麗な光景だろう。


……なんて思える余裕は全くなくて!


ちょっと待って!
やっぱりこれ、おかしい!

だって、どう考えても、
これ、手つないでるから!


石段でも一ノ瀬くんのこと、
全く引っ張ってないし!

っていうか、私が引っ張られてたし!


ぴたりと足を止めて一ノ瀬くんを見上げる。


「一ノ瀬くん、あのね、これ」


つないだ手に視線を落とすと、
一ノ瀬くんにすごまれた。


「怖いんだろ?」


はい、
一ノ瀬くんがとても。

なんて、言えないよ……


いやいや、でも、さすがにもう!
これ以上はちょっと無理!

ドキドキしすぎて、息ができないっ。

一ノ瀬くんにこんなことされたら、
普通じゃいられないよっ。


いくらなんでも、
一ノ瀬くん、
自分のカッコよさに無関心すぎるっ!


すれ違う女のコたちが、
みんなキラキラした目で
一ノ瀬くんのこと見つめてるんだから!


私なんて、
簡単に思考停止しちゃうんだから!
< 120 / 276 >

この作品をシェア

pagetop