隣のキミをもっと溺愛、したい。
暗闇に包まれた神社の石段を

一ノ瀬くんと
手をつないでおりる。


「天野、手、小さいよな」

「一ノ瀬くんは、手、大きいね」


会話もなんだかぎこちなくて
恥ずかしくて、

それなのに、
もっと一ノ瀬くんと
一緒にいたいと思ってしまう。


最後の石段をおりたところで、
一ノ瀬くんにちいさく頭をさげた。


「部活あとなのに、
つきあってくれてありがとうっ。

そのっ、いろいろありがとう。

試合、応援してるね、あと」


「家まで送るよ」


当たり前のように口にした
一ノ瀬くんの申し出を必死で辞退する。



「だ、大丈夫だよっ。
一ノ瀬くん明日も朝練があるんだから
早く帰って休んだほうがいいよっ」


だ、だって、これ以上一緒にいて
まともでいられる自信がなさすぎる。

ドキドキしすぎて、
心臓が止まって

倒れちゃうかもしれないっ!


ちょっとひとりになって

冷静にならないと、
変なことを口走ってしまいそう。


なにより
いつもとは違う一ノ瀬くんに、

私の根性なしの心臓なんて
簡単に限界突破しちゃうっ。


「前に連れ去りにあった話
聞いちゃったから

さすがにこんな時間に
ひとりで帰すことなんてできないよ。
送らせて」


「ほ、ほんとにダイジョブ」


「拒否権なんて、ないに決まってるから。
つうか、カタコトになってるし」


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