隣のキミをもっと溺愛、したい。

甘い、甘すぎる。

翌朝、下駄箱で朝歌と話していると
朝練を終えた一ノ瀬くんが通りかかった。


「おはよ、天野」


その瞬間、昇降口がどよめいた。


「お、お、お、お、おはっ」


「くくっ、天野、真っ赤!」


『おはよう』と言い終わる前に、
一ノ瀬くんの指先に、

おでこを弾かれた。


「一ノ瀬くんから挨拶って、
羽衣、なにかあったの?」


目を見開いた朝歌に
必死で説明する。


「あの、色々あってね。
そのっ、記録を取ったらノートがシュートで! それから神社で! それで石段が!」


「落ち着いて、羽衣。
全く意味がわからない」


呼吸を整えて、
朝歌に説明しようと思うけれど、

冷静になればなるほど
昨日の出来事の現実味が薄れていく。

また私の自意識過剰だったらどうしよう?

いや、でも、さすがに!


そのとき、ふと一ノ瀬くんが、

『大会が終わるまで待ってて』

と言っていたことを思い出す。


大会が終わるまでは
誰にも言わないほうがいいのかな?


でも、ずっと黙っているのも
隠し事をしているみたいで、

心苦しい。


それなら
なんて伝えればいいんだろう?


「あとでゆっくり聞かせて!」


教室に入り、
自分の席にもどった朝歌に
こくんとうなづいたものの、

あれこれと考えている間に、
ホームルームがはじまってしまった。


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