隣のキミをもっと溺愛、したい。

俺だけものに、なればいいのに。

「一ノ瀬、とりあえず飯食えば?」


非常階段で
弁当を差し出した伊集院に、

首を横にふって
ガシガシと頭をかきむしる。


「どうしたんだよ」


眉をひそめる伊集院に、本音を零す。


「やばい、天野に変なこと口走りそうで
まともに会話できない」


「ま、それは
気にしなくていいんじゃね。
もともと、
まともな会話なんて成立してないだろ」


「……にしても」


「もうさ、さっさと告っちゃえば?
それでダメなら、次にいけばいいじゃん」


「ふざけんな」


冗談でも、

『ダメなら』とか
『次に』とか、簡単に言うな。


「なにをそんなに悩んでるんだよ」


「まじで、理性ぶっとんで天野のこと、
押し倒しそうになる」


「……それはさすがにヤバイだろ」


「分かってるよ」


「こうなったらさ、
最後の切り札つかっちゃえば?」


「最後の切り札?」


じっと伊集院を見つめると、
伊集院がにやりと笑う。


「バスケの練習、
見に来てもらえばいいじゃん。

お前のプレイしてる姿は、
男の俺が見ても惚れるレベル」


「あー……」


気まずくなって
伊集院からコンクリートの床に
視線を落とす。


「なにその反応」


「すこし前に、天野から
『バスケ部の練習見に行こうかな』
って言われて、

『見に来んなよ』的な
圧をかけたことが、
ある……気が、する」


「は? お前なにしてんの? 
本物のバカなの?」


伊集院の呆れた視線に、

しぶしぶと口をひらく。


< 83 / 276 >

この作品をシェア

pagetop