この溺愛、絶対ナイショです♡
俺はジャケットを羽織り直すと、自分の立ち位置に行った。
『ミサキは渡さない』
『口で言うのは簡単だよな。でも、俺はミサキのこと本気で好きだから』
不敵な笑みを浮かべ、レイに近付く。
『大体、お前はあいつを泣かせ過ぎなんだよ』
『……っ』
こいつ、セリフぶっ飛んだんじゃないか?
景斗は黙ってしまった。
『…それでも俺はあいつのそばに居たいんだ。俺が泣かせてたとしても、あいつを幸せに出来るのは俺だけなんだよ』
アドリブかよ…。
どうせ、平岡のこと言ってるんだろ?
『幸せ?笑わせるな。お前が自己満足してるだけじゃねぇか。あいつを幸せにしたいのなら、別れろ』
俺はそれだけ言うと、教室に戻ろうとする。
『…別れねぇよ。あいつの幸せはあいつが決めるもんだよ。あいつが望むなら別れる。だけど、望まねぇ限り俺が幸せにする!』
『…あっそ』
「カット!!!二人のアドリブ、最高だよ!恋する気持ちがよく伝わってきた!」
「「ありがとうございます」」
監督と話し終わると、棚部が俺たちに近寄ってきた。
「あれってさ、“ミサキ”を思って言ってないわよね?現実で好きな子が同じなんでしょ」
この人も鋭いな。
「あ、言わなくていいわよ。相手もなんとなく検討つくし。
あなたたちの演技、面白かったわよ」
「ありがとうございます」
俺は何も言わず頭を下げた。