好き、なんだよ。
深呼吸をし、顔を上げた

...その時だった。



「邪魔だ。どけろ」



冷や汗が汗腺から一気に滲み出る。


ちらっと横を見ると...目があった。


とくんと胸が鳴り、脈拍が激しくなる。


顔が...熱い。



「また同じクラスかよ。心まで朽ちてる泥棒女と同じなんてもう勘弁なんだけど」


「ごめんなさい...」



チッと舌打ちをし、私の真横を通って教室に入っていく。


蚊の鳴くような私の声なんて聞こえてないんだ。


彼はあっという間にクラスに溶け込んでいく。


リュックを放り投げ、男子の輪の中に飛び込む。


男子たちと笑い合う。


大声ではしゃぐ。


私も足を踏み出す。


水面に指をちょんと入れた時のように模様が出来る。


私が乱した波長はマーブル状になり、いつまでも消えない。


他人と明らかに違う空気を生み出し、私の席の周りに渦巻く。



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