好き、なんだよ。
冬の夜風は凶器だ。


離れると、風が身に染みて凍えそうになる。


寒空の下で泣き続けた私達は、ようやくまた歩き出した。



「あっ、これ」


「そうだ。私、うさぎ係りだ」


「こんなのだけど、一応オレからのプレゼントってことで」


「うん、ありがとう」



ありがとう...。


その言葉を口にしたら冷えきった私の心が温かくなった。


ランタンに灯りが灯ったかのようにほの温かい。


今なら言える。


今までの人生の中で1番温かい言葉を。



「玲音くん。私と出会ってくれてありがとう」


「...オレもだ。オレと出会ってくれてありがとう」


「うん。どういたしまして」



並んで歩くのは最後。


こうやって話せるのも最後。



「泣くなよ。卒業式で会うだろ?」



そんなこと言ったってそんなに長話できないし、第一してはいけない。


玲音くんは、栄木さんを幸せにするんだから、私が時間を奪っちゃいけないんだ。


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