好き、なんだよ。
なんて頭では分かっていても心は正直だ。


帰りの電車の中で私はずっと喋っていた。


普段お喋りじゃないのに、よくそんなにネタがあるな~と自分でも感心するくらいに口を動かした。


話しても話し足りない。


ずっと側にいて、


ずっとこの声を聞いていたい。


私の話を聞いてほしい。


そう思ってしまうんだ。



「次は宮森ぃ~、宮森です」



あっ、着いてしまう。


私は電車の速さを初めて恨めしく思った。


あなたのお陰で遅刻せず、毎日高校に通えたのにね。


ごめんなさい。



「降りるぞ」


「あっ、待って」



私は2度と追いかけることがないであろうそのいとおしい背中を見つめながら足をせっせと動かしたのだった。
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