好き、なんだよ。
「おい、乱暴だぞ」



彼がすかさず突っ込んだ。


だけど私は目の前のものに目を奪われていた。



「うさぎ...」



ずっと離れ離れになっていたうさぎのキーホルダーだった。


今日は泣かないと決めて卒業式の歌の途中で泣きそうになったけど、必死に堪えていたのに水の泡だ。


涙が止めどなく溢れてくる。


この子だけでも戻ってきて良かった。


少しだけ心が軽くなった。



「持ってきてくれて、ありがとう」


「これで始まり、これで終わりだな」


「そう...だね...」



彼の言おうとしていることが理解できた。


大学には行かないけど、高校は卒業出来たから私もそんなにバカじゃない。



「オレも進む。だから朽木も前に進めよ。それは箱にしまえ。ってことで、オレは夏音が待ってるから行くな」


「うん...」



離れたくない。


離したくない。


ここにいてほしい。


追いかけたい。


抱き締めたい。


ずっと側にいたい...。



「あっ、そうだ。誕生日おめでとう!今年はちゃんと言えて良かった。...じゃあな!」



...行かないで。


行かないでよ!


< 505 / 509 >

この作品をシェア

pagetop