好き、なんだよ。
蚊の鳴くような声で彼女は今日もまた言った。



「ごめんなさい...」



謝られたところで何かが変わるわけでもないのに、オレは彼女に謝ることを強いる。


あいつのこともオレの後悔も、


全部、


全部全部、


忘れよう。


笑ってよう。


オレはリュックを放り投げ、男子の輪の中に飛び込んだ。



「おっはよー!中島ぁ今年もよろしくな」


「よろしく」


「中島、誰?」


「去年同じクラスで、すっげえ頭良くてクラス委員長だった香西くん」


「おいおい、何だよその紹介?マジでプレッシャーなんだけど」


「いいじゃないか。全部ほんとのことなんだし」



確かにその通りかもしれないが、こんなに上げられちゃうとな、急降下した時に目も当てられないって。


中島の想像の2倍、いや3倍、オレは小心者なんだよ。


そんなオレの気持ちなんか知るよしもないか。


オレはフレンドリーに肩を組む。



「ご紹介に預かりました、香西玲音です。とりあえず今年1年間よろしくお願いしまっす!」


< 54 / 509 >

この作品をシェア

pagetop