君の声
ちょうどその時だった。
神からの救いの手のように電話が鳴った。
私は普段見せないほどの素早さで受話器を取った。
「お世話になっています。…………」
電話に出たが最後、私は完全に山田さんに背を向け電話の相手と話す形となってしまった。
電話で話しながらも山田さんが気になる。私は肩越しに、ちらりと山田さんの方を見た。
それは、ちょうど山田さんが、背を向けて去っていく瞬間だった……
その時、私が見た山田さんの横顔は、美しすぎるほど切ない顔だった。
私は胸がチクリと痛んだ…………