君の声
オフィス内の明かりはほとんど消されてしまった。
私の席の周りだけひっそりと明かりが残った。





はぁ……

どうしよう……





もう19時まで10分も無かった。




薄暗闇のオフィスの中、一人デスクで固まる私。











トゥルルルルル!





突然の電話の音に心臓が飛び上がるほどビクリとしたが、反射的に私は電話を取っていた。




「お疲れ様です。はい、はい…………え?……」




その電話は、習志野支店の岡本さんからだった。




セミナー参加されているお客様の、今夜宿泊する部屋数を間違えており、5部屋足りないという。


電話口の岡本さんは今にも泣き出しそうな声だ。
確かまだ入社して間もない彼。
いつも不安要素をたくさん抱えていたんだっけ……



しまったな………。
私ももっと気を付けて確認しておけば良かった。



でも、今はそんなこといってる場合じゃない。早くホテルを押さえないと、セミナーを終えたお客様が大変なことになる。



私は岡本さんに、すぐホテルをあたります。とだけ伝え電話を切った。



とにかく、セミナー会場の近くのホテルを片っ端から電話するしか無さそうだ。いつも助けてくれる心強い林さんはいないし……

かといって、他に誰もいない……




考えている時間は無かった。
私はホテルリストを出し、それをざっと確認し、すぐさま電話をかけ始めた。


5、6件のホテルに問い合わせたが、どこも今夜は満室だった。



しまった……今日は金曜日だぁ……



それでもとにかく電話をしよう。





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