君の声
出入口まで来ると、そこには扉を手で押さえ、開けて待っている山田さんの姿。



『お疲れ様です。さあ、行きましょう。』



美しい笑顔でそんな風に言われると…………
王子様が私を迎えに来たのかと勘違いしてしまう。



その美しい立ち姿…………



よく見ると、扉を押さえる腕や肩は、スーツの上からでも分かるほどに逞しかった。



その美しい顔立ちからは想像も出来ないほどに…………



山田さんの男らし部分を発見した私は、急に自分が置かれている現実に気付いた。








今、この広いオフィスに山田さんと二人きり…………!








そう思うと、急に心臓がドキドキしてきて、また山田さんを意識しすぎて直視出来なくなってしまった。






苦しい…………






私は下を向いたまま、山田さんにお礼を言うと扉に鍵をした。








鍵を締め振り返ると、今度はエレベーターの扉を押さえて待っていてくれる山田さん。



まるで、こっちだよ。とでも言うように、首を傾げて美しく微笑む山田さん…………






うっ……

苦しい、胸が苦しい………






息をするのもままならない私は、ふらつく足取りでエレベーターへ向かった。






…………待って!!


このままエレベーターに乗ったら…………


山田さんと密室で二人きり!


あんなに美しい山田さんと、あんなに狭い空間で…………!!


ムリ……


耐えられない!!!


どうしよう、どうしよう………





< 19 / 28 >

この作品をシェア

pagetop