君の声
すると突然、山田さんの声がエレベーターの中に響きわたった。
『お疲れ様です。習志野支店の山田です。』
え……
『3月に一件新規の手配をお願いします。場所は横浜です。人数は…………………………』
急に話し出す山田さん。
…………何。
…………何を言ってるの。
………………。
でも、待って…………
この声、いつも私が電話口で聞いている声。
優しくて、品がある声
柔らかで、艶のある声
そして甘い声……
私は目を閉じ山田さんの声だけに集中した。
暗闇の中、山田さんの声だけが響く。
いつもの山田さんの声
私の大好きな山田さんの声……
毎日、楽しみにしていたあの声
いつも、私を元気にしてくれたあの声
その声を聞いているうちに、私はだんだんと落ち着きを取り戻した。
もしかして、山田さん……
わざと………………
『…………いつも無理言ってすみません。手配よろしくお願いします。』
「…………。」
『…………お願いします。』
「…………はい。わかりました。」
私はいつもの私で話すことが出来た。