君の声
私は林さんに気付かれないように小さく深呼吸をした。
「お電話代わりました。」
『おはようございます。習志野支店の山田です。』
「おはようございます。」
朝から柔らかな品のある声に私はうっとり。
『また、3月に1件新規で手配をお願いします。場所は ……………………』
山田さんは滑らかに仕事の内容を伝えてくる。
話し方も上手い。
しかも聞き上手。
声のトーンに優しさが溢れている。
『………………でお願いします。また後でメールもします。いつも無理なお願いばかりで本当にすみません。』
「いいえ。いつもお疲れ様です。早速手配します。」
『ありがとうございます。宜しくお願いします。』
と言って電話は切れた。
何てことない、本当にただの仕事上の会話なのだ。個人的な会話なんていっさい無い。
でも、でも、山田さんの声を聞くと母性をくすぐられると言うか、胸がキュンってなるのよね~。
ほぁ~
さて、一日頑張れそうだよ!
そう心の中でガッツポーズをとり、私は仕事に打ち込んだ。